「あぶない!!」
 そう叫んで、手を伸ばした。

 次の瞬間。信じられない事が起こった。
 陸くんの目の前まで迫っていた車が、1メートル程飛び上がり、空中で静止した。
 ウワッ!!
 車の下では、尻もちをついた陸くんが、両腕で頭の辺りを庇っている。

 ええーっ! どうなってるの?
 私が伸ばした手の先で、車が浮遊している。
 まるで、私の手が車を掴み上げているようにさえ見える。
 試みに、伸ばした手を右に動かす。つられる様に、車も空中を右に移動する。
 腕を左に動かすと、車も左に……。
「な、何。どうなってるの?」
 良くは分からないが、このままでは陸くんが危ない。
 私は、腕を動かして、車を用水路の上まで運ぶ。
 私が手の力を抜くと、空中で静止していた車が落下し、用水路の中に突っ込んだ。