ハッとして、ベンチで目を覚ます。
 ほんの少しの休憩のつもりが、一時間ほどうたた寝したようだ。
 シーちゃん達は探索を続けているだろうに……。ごめんなさい。
 二人からの連絡はまだない。あちらでも、捜索が難航しているのだろう。
 私も、陸くん探しを続けないと。
 そう、思って立ち上がったとき、目の前の電線に思いがけない物を見つけた。
 白いカラス。
 私が、初めて超能力を使った日、陸くんの肩に止まっていたカラスだ。
 このカラスの後をついていけば……。

 カラスの飛び立つのをじっと待つ。
 飛んだ!
 すかさず後を追う。見失わないよう、全力で走る。
 家の屋根の向こうに回った。大急ぎで、追いかける。
 住宅街の中を、カラスを追って走りまわる。
 流石に鳥と人間の足では競走にならない。屋根を幾つか超えた辺りで見失った。
 駄目か……。
 そう思いながら、カラスの消えた辺りをトボトボと歩いていると。
 カァー。とカラスの鳴き声が聞こえた。

 声の方を見る。
 居た。
 二階家のベランダの手摺りに白カラスが止まっている。
 と、次の瞬間、ベランダの奥のサッシの扉が開き、陸くんが姿を現した。
 陸くんは手摺りに止まる白カラスに、餌のような物を与えている。
 ここが、陸くんの家なんだ。
「陸くん」とその名を叫ぶ。
 私の声に気が付いた陸くんと目が合う。
 陸くんは、いかにも迷惑そうな顔をして、扉の奥に引っ込んだ。