白いカラスには少し興味があったけど、シーちゃんに止められたので見に行くのは
止めにした。
 けど、多少未練があったので、歩く速さを調整し、その子との距離を10メートル
程に保ったまま、用水路沿いの道路を歩いて行く。
 50メートル程進むと、道路が緩やかに左に曲がり、用水路から離れていく。道は
そこから少し上り坂になる。陸くんの姿がカーブの向こうに消えた。
 数秒後、私達三人がカーブに差し掛かる。
 すると、坂の途中で陸くんがしゃがみこんでいるのが見えた。陸くんはその姿勢で
地面に落ちた何かを拾っている。件の白カラスも盛んに地面をついばんでいる。
 そうか、きっとカラスの餌を落としたんだね。
 落とした餌が転がったのだろうか、陸くんがしゃがんだまま、こちらを向く。

 ガタン。
 何かの音がした。
 上方を見やると、坂の途中に宅配便の車が止まっていた。
 ガタン。

 また、音がした。
 と同時に、止まっていた宅配便の車がスルスルスルと後退を始めた。
 えっ、えっ。と思う間もなく。車は グングンと速度を増して、陸くんに向かって
突進していく。陸くんは後ろ向きなので、全く気がついていない。
 白カラスが異変に気がつき、ギャーと鳴いて地面から飛び立つ。
 陸くんが慌てて後ろを振り向く、車は目と鼻の先、だめだ! 間に合わない!