中学生の弟、怜央が恋した女子高生。
 少し顔見知りになったその子と、病院の外で再会したのは、その後すぐだった。

 1ヶ月間の実習が終わり、専門学校も通常の授業が始まって、忙しない日常を送っていたある日。
 大学生の弟が、最近付き合い始めたらしい彼女を家に連れてきた。

「おじゃまします」
「えっ?!」

 家に上がってきた彼女を見た私は、言葉を失った。
 それは……怜央が本気になっていた、あの高校生だったから!

 まんまとお兄ちゃんに奪われてしまったらしい。

 確かに、大学生の弟の凌は、3兄弟の中で一番顔がいい。
 優しくてハニカミ笑顔がかわいくて、ちょっと無口。でも喋るとなんだか独特。

 やんちゃボーイより、大学生でお金も車も持っているお兄ちゃんのほうが、魅力的に映ったらしい。
 うーん。確かにそうかもしれない。
 私も妙に納得してしまった。

 玲央は、
「俺がナンパしたのに、兄ちゃんに紹介したら取られた!」と悔しがっていた。

 かわいそうにー。
 でも、ちゃんと中学校に行って、高校に行けるくらい勉強しなよ。
 ヤンキーとかギャル男とか、もう流行んないよ~って言ってやった。
 「はいはい」と素直に返事をした怜央は、珍しく傷心なのか、布団を頭からかぶる。

 よしよし、と布団の上から撫でると、「早く退院してぇぇぇ!!」と絶叫が響いた。