俺は、家に入って、大桃の話を聞き始めた。
「実は、わたし高校2年生の頃、告白したんだ。すごく好きだった人に。このチョコマカロンを渡してね」
大桃はリボンを解いて袋の中を見せた。確かに、茶色いハート型のマカロンが3つ入っている。
「でも、駄目だったの。マカロンも受け取ってもらえなくて……。家に帰って泣きながらマカロン食べてたんだ。それで今日ふと思い出して作ったの」
そう言って、彼女はハートのマカロンを1つとって見つめる。
目が赤く光っているけれど、大桃の口元は頑張って笑おうとしている。
「ひどい奴だね。受け取るぐらい、いいじゃないか」
自分の口からすらすらと、そんな言葉が出ていた。告白されても、受け取らないなんて、なんて失礼なんだろう。彼女は、一生懸命作っただろうに。
「食べても、いいか?」
「食べてくれるの?」
彼女は、マカロンを手に乗せて、はい、と俺に差し出した。