アスファルトを殴るように、激しく叩きつける雨は、たとえ傘を持って居ても濡れてしまうだろう。

屋根を備えた駅の出入り口から、茫然と外の景色を眺め、平たいため息を漏らした。

わざわざ傘を持って出たのに、盗られたのかと思うと、ビニール傘を買う気にもなれない。

昨日に引き続き、濡れ鼠になるのを覚悟して、晴人の元へと帰ろうと足を出した時。

「お母さん!」

水色の長靴でパシャパシャと水溜まりを割り、晴人が駆けて来た。右腕に一本の桃色の傘を掛け、両手でしっかりと自分の傘を握り締めている。その姿を目の前に捉え、私は屋根の下に留まった。

「晴人……どうして?」

私よりまだ少し小さい晴人は、安心した笑顔ですぐそばまで辿り着く。

「お母さん、また傘持って無い気がしたから」

晴人は自分の予想が当たったからか、それともすれ違わずに無事に会えたからか、とても嬉しそうだった。