家で待つ息子を思い、また帰路を急ぐ。

降りしきる雨が涙のように、頬を伝って流れ落ちた。

ぐっしょりと水を含んだ衣類が肌に張り付き、徐々に重みを増していく。

映画にある【雨に唄えば】のように、笑顔でこの雫を受け止めたいのに、そう出来ない。

夫が居なくなったあの日から、私の心は濡れたままだ。

家族を守る大黒柱の夫は、紛れも無く私たちを雨から凌ぐ傘だった。

頭の先から靴の中まで濡れ鼠の状態で帰り着くと、息子の晴人《はると》が驚いて駆け寄った。

「お母さん、大丈夫? 傘買わなかったの?」

「傘ね。売り切れちゃってて」

言いながら、脱衣所に置いたフェイスタオルで水分を拭い、ぼとぼとになった服を脱ぎ捨てた。

重みが無くなり、体が軽くなった。