彫刻のような整った顔に、ゆるくウエーブした長めの髪。前髪をかきあげるその仕草にはただならぬ色気があって、流し目が妙になまめかしい。
　年齢はよくわからないけれど、雰囲気からして三十歳くらいだろうか。白シャツに黒ベスト、蝶ネクタイというフォーマルな格好もよく似合っている。

　そんな美形と起き抜けに至近距離でご対面してしまったのだから、悲鳴をあげてしまうのも無理はないと思う。
　もうひとりは、気を失う前に会った女の子。猫耳付きニット帽からは、癖のある黒髪がぴょんぴょん飛び出ている。黒目がちなアーモンド型の瞳が猫みたいだ。
　女の子は相変わらず無表情のまま、膝に顔をうずめた体育座りで私たちのやり取りを見守っている。

　どきどきと音を立てる心臓をなだめながら視線を動かしてみると、猫たちが身体を取り囲んでいた。夢の中のふわふわの感触は、この猫ちゃんたちだったのかな。
　お腹の上の毛布は、この人たちがかけてくれたのだろうか。

　……お腹。そういえばさっきお腹の音を聞かれたんだった、と思い出したら、顔が熱くなってしまった。