雄大が漠然と思い浮かんだのは、”お互いの働き方を変えること”だった。
だが、それ以上の具体的なアイデアは浮かばない。

自分が仕事を辞める選択肢はない。
それは琴葉もそうだろう。
両親が残してくれたminamiとパンの知識は、琴葉にとってかけがえのない大切なものであるに違いないからだ。
だからこそ、こうやって毎日あくせくと働いている。

だったらどうする?

琴葉の家に住むことは雄大にとってメリットばかりだ。
会社には近いし、遅くなっても琴葉が甲斐甲斐しくもご飯を作って待っていてくれる。
パン生活は徐々に普通の和食になりつつある。

琴葉はどうだろう?

今までパンのことだけ、自分のことだけを考えて生活すればよかった。
それが食事や洗濯掃除などの二人分の家事まで気をつかって生活するようになった。

むろん、それを雄大が強要していることはない。
むしろ気にしなくていい無理にやらなくていいと伝えているし、雄大自身もできることはやっている。
ハウスキーパーだって頼めばいいし、外食だってすればいい。
なのに琴葉は、あれもこれも自分でしようとするのだ。

これでは体を壊すに決まっている。
そんなこと考えなくてもわかることじゃないか。