ランチにというので、惣菜系のパンを2つと、デザートにもなりそうなフルーツののった甘めのパンを1つ選ぶ。

「こちらでいかがですか?」

選んだパンをトレーにのせて雄大に見えるように差し出すと、「うん、美味しそうだ」と答えが返ってきた。

「ありがとうございます。お口に合うと嬉しいです。」

そう言いながら丁寧に紙袋へ詰め会計をする。
その流れるような作業とひとつひとつが丁寧な所作に見とれながら、雄大は商品を受け取った。

「ではシュガートップはお取り置きしておきますね。」

「ああ、ありがとう。」

「ありがとうございました。」

琴葉の心地よい挨拶を背に、雄大は店を出た。

なるほど、パンの美味しさだけではなく店も店員も雰囲気がいい。
注文するスタイルで面倒なのではと思ったがそうではなく、あの店にはあのスタイルが合っているんだなと感じた。

会社に戻る道すがら、買ったばかりのパンをひとつかじる。
食べ歩きなんて学生の頃以来だ。

「うまい。」

自然と漏れ出た声は、自分の耳に心地よい響きを残した。