「何、まだいたのかよ」


背後からの聞き覚えのある声に
誰もいないと思っていただけに
ハッとした。


「ビックリした…
 なんだ煌月か。
急に驚かせないでよ」


心臓に悪いわ。←アタシが言うと笑えない(笑)


「お前いつもこんな時間まで残ってんの?」

「今日はコレでも早い方。
 煌月こそ珍しいじゃん。
 残業?」

「まぁ、そんなとこ」

「そっか。
アタシはもう帰るわ。
久しぶりに日付け変わる前に終わった事だし」


怠い体に鞭を打ちながら
デスクの上の荷物を鞄に入れ
帰る身支度を始めた。


「お前さぁ…
 どうしてそんなに頑張れんの?」

「は?」

「もうそんなに張り詰めて
 必死にならんでもいいだろ」


そう言いながら
いつの間にかアタシの元に近付き
ポン…と軽く肩を叩かれた。


「そんなに張り詰めてもないと思うけど…」

「黙って肩の力を抜け」


なぜか煌月のその言葉が
“魔法の呪文”のように感じ
次の瞬間
グラっと視界が揺れるのがわかった。


「目がチカチカする…」


え…
何…?
なんか
体が…変、だ。