タクシー内では終始
早乙女さんは煌月の肩にもたれるように寄り掛かり
その煌月はめちゃくちゃ怪訝そうな表情を浮かべている。

アタシはというと
なかなか落ち着かない脈拍に嫌気が指しながら
無言のまま窓の外を眺めていた。

ポツポツと振り出した雨は
少しずつタクシーの窓に当たり濡らしていく―――


それからしばらく走り
寂しそうな表情をする彼女に挨拶をし
早乙女さん宅に送り届け
またしばらく車に揺られ
自分達のマンションに到着した。


「今日は早乙女さんいないし
 ゆっくり眠れるっしょ。
 じゃ、お疲れ」


若干、息切れしながらも
何事もない様子で手を振り鞄の中の鍵を探す。
しかしそんな事
煌月にはなぜかバレていて…


「いつから調子悪いんだ」


確認されたー。


「…何が?」

「息が上がってる。
 気付かないとでも?」


コイツ…
見破っていたか…。


「たいした事ないから大丈夫。
 ちょっと飲みすぎたのと喋りすぎただけ」


言いながら鞄を漁るが
どこに入れたか鍵が見当たらない。