ただ…


「本当の事を言っただけ、だから…」


そうなんだよ。
ただの偽善者まがいな事を、しただけ。
そんなにアタシ
優しくないんだよ…


「今後はどうするの?
 仕事復帰とか
 もう決まっているの?」

「ジンくんは
 副編集長って立場もあるから
 来週には復帰するって言ってた。
 私の方は…まだ、かな。
 お父さんの遺留品の片付けが終わってないから…」


あ…そうだった…
お母さんの方が助かっても
お父さんは…。

家にいれば
そこに確かに存在してた証が残っている。
それを
どんな思いで彼女は片付けているんだろう…


「結構、量もあったりして
 なかなか終わらなくて…
 お母さんがいれば
 もっと早く進むんだけどね」


そう言いながら
複雑そうに苦笑する姿が
逆にこっちの胸が痛む。


「早乙女さんは大丈夫?」

「…うん。
 大丈夫」


強いな…このコは。
煌月の事も
自分の事よりも気に掛けてたんだから
立派だよなぁ…


「じゃぁ私、病院に戻るね」

「あ、うん。
 報告してくれてありがとうね」


ニコッと純粋な笑顔を向け
嬉しそうに
彼女は会社をあとにした。