「ごめん…煌月…」


声が、体が震える…
この場に押さえつけられているような
まるで金縛りのように全身が動かない…


「俺にどうしろって言うんだよ。
 父親が死んで母親まで死にそうなのに
 いつも通りにしてろって?
 笑えって?
 んな事、出来るワケねぇだろ」


アタシが余計な事を言ってしまったせいか
本人からは
さっきよりも更に強い殺気が感じられる。
殺伐とした空気が漂っている。


でもコイツの言う通りだ…
無神経すぎたのはアタシの方だ。
“いつも通り普通にしてろ”なんて
誰だって無理に決まっているのに
強要させてしまった…

アタシが気持ちを理解するなんて
出来るはずがなかったんだね…


「煌月…
 アタシが悪かったよ。
 何もわかってあげられないのに
 余計な事ばっか言って傷つけた。
 ただただ追い込ませただけだったね。
 もう何も言わないから…」


だけどせめて…
どうかお願いだから…


「早乙女さんだけは
 拒絶しないであげて…」


彼女は何も悪くない。
そうでしょ?煌月…


「七星さん…」


ドアの外にいたはずの早乙女さんが
ゆっくり中へと歩いてくる姿が視界に入った。