「煌月のヤツ
 今すっげぇ苦しいだろうな…」

「陽向さん…」


暗い表情は一瞬しか見せていなかったはずなのに
今度はもう完全に明るさを失っていた。


「独りになりたいはずなのに
 『業務のほうが心配だ』とか言って仕事に来ては
 いつも通りきっちり全て終わらせて
 何事もなかったように普通に帰るんだ」


煌月、お母さんがこんな状況でも
しっかり仕事に来てたんだ…。


「俺には絶対無理。
 気持ちを切り替えるなんて器用な事は出来ないな。
 アイツのツラさを100%わかってはやれないけど
 俺が逆の立場なら精神的にぶっ壊れてると思う。
 何もしてやれないし言葉も掛けてやられないってのは
 結構…キツイな」


コレがこの人の本音なんだ…

そしてこの人もまた
アタシと同じ事を考えてる。

“何もしてあげられない”
“何も言葉を掛けてあげられない”

そりゃそうだよね…


「編集長が言ってたけど
 父親の葬儀は身内のみで
 家族葬で済ませたんだってさ」

「そう…」


アイツ自身と話をしてないから
それも知らなかったな…。