「あのー…煌月さん…」


そろそろ離れたほうが…
アタシも心臓バクバクですし…


「わ、悪いッ!」


ハッと我に返ったのか
急に体を離しめちゃくちゃ後ずさりされた。

何もそんな逃げんでも…。


「どしたのさ…急に…」

「な、なんでもねぇよ!
 今のは忘れろ!!」


またそんな無茶苦茶な…
なんだよ…自分がしてきたくせに。


「わかったよ…
 忘れます…」


ダメだ…
全然脈が戻らない…

『ふぅー…』と大きく息を吐き
目を閉じて何度も荒い呼吸を繰り返す。


「七星…まだツライか?」


それは何に対して?
メンタル?不整脈?
答えるなら、どっちもだ。


「平気だから…
 アンタは帰りな。
 もう少しすれば落ち着く。
 そしたらすぐ寝る…」


目を閉じたまま治まるのを待ち
静かな部屋の時計の針が進む音を聞いて
それに合わせるように呼吸を続け
いつの間にか意識を手放していた―――