「もう10時じゃん。
 さすがにアタシまで疲れた…」


大欠伸しながらコピー機の前で大量印刷待ち。

よく考えてみたら
アタシ今日は休みだったはずなのに
どうして職場に来て他部署の
それも副編集長の雑務を手伝ってんだろ。


「アイツ
 風邪とか言って上手いこと人を使ったな」


コレが終わったら帰ろ。
借りは返したんだし。


「ほら、終わったよ」


自分の席に座って仕事をする煌月に
仕上がった大量の書類達を渡そうと声を掛けたけれど…


「…あぁ、悪いな…」


頭を押さえる後ろ姿に
妙に違和感を感じた。


「大丈夫なの?」


なんとなく気になって
後ろから様子を伺ってみたモノの…


「…たぶんな」


何その微妙な返答は。
それ絶対(熱があって)ダメなヤツでしょ。


「悪いけど
 ちょっと触るよ」


そう言いながら煌月に近付くと
ヤツの許可はないけど額に手を当ててみた。


「あー…少しありそうだな、コレは」


ちゃんと測っちゃいないから断定は出来ないけど
熱いよ、たぶん。


「仕事切り上げて
 もう帰ったほうが―――」


言い掛けて突然。
体温を測っていたその腕を
煌月はグッと掴んだきた。