藤原くんは突然わたしにとんでもないことを言ってくる。

弄ぼうとかたぶらかそうとか、そういうことではない。

全部彼の気まぐれ。だから、たちが悪い。

ガードしようにもまるで予期していない場所から飛んでくるその言葉をわたしはよけることもできずに真正面から受け止めてしまう。

藤原くんは誰にでもこういうことを言ってるんだろうか。

もしそうだとしたら、とんでもなく恐ろしい。

だって彼にかかれば女子は十中八九彼の手中に収まるだろう。

藤原くんは魅力的な男子。それは認める。その魅力を彼が自覚していて本気を出せば大抵の女の子はころりと彼に落ちるだろう。

ひとたまりもない。

大抵の女の子。

その中に自分が含まれている気がしてなんだか居心地が悪くなる。

隣で寝転ぶ藤原くんにゆっくりと視線を向ける。

目をつぶっている藤原くんの前髪が風に揺れる。

今、この瞬間がわたしにはたまらなく貴重な時間に思えた。

心穏やかに過ごせるこのひととき。

わたしは藤原くんとこうやって一緒にいられるだけでいい。

それ以上のことなんて望んでいない。

望むのは贅沢すぎる。

わたしの隣にたまにでもいい。

こうやって気まぐれな彼がいてくれるだけでわたしの心は救われる。

たったひとりだけでもいい。彼がいてくれれば。