平日の昼ということもあり就園前の子供を連れたママや家族連れがレジャーシートをしいてお花見を楽しんでいた。

「綺麗だな」

ぼんやりと桜を見上げてそう言葉を漏らす藤原くんの横顔をじっと見つめる。

本当に整った顔をしている。

女の子でも通用しそうなぐらい大きく澄んだ茶色い瞳。

でも鼻筋や顎のラインは男らしい。

Yシャツをまくり上げている腕もやっぱりわたしの腕よりたくましい。

背だって私より20センチぐらい大きい。この容姿だ。

藤原くんがモテるのも無理はない。

「そんなマジマジ見られるとさすがに照れるから」

「……!?」

藤原くんの言葉に目を白黒させる。

急に恥ずかしくなって目を反らすと、藤原くんはわざとわたしの顔を覗き込んでからかう。

「結衣ちゃーん、今度は恥ずかしくなった~?」

ニヤニヤとした表情を浮かべながら楽しそうにわたしにちょっかいを出してくる藤原くん。

まるで子供のような彼に翻弄されているわたしはさらに子供なのかもしれない。

「顔、見せてって。照れてんの、可愛い」

藤原くんはヨシヨシとわたしの頭を数回撫でると飽きてしまったのか、それ以上言葉を続けることなくその場にごろりと寝転んだ。

彼の興味はもうわたしではなく桜に移ったのだと分かっていた。

それなのにわたしは藤原くんから体をそらした状態のまま固まっている。

正確には固まって動くことができない。

可愛いなんて突然言われたから。そんなことを言われ慣れていないわたしはその言葉をうまく消化する術を知らない。