保険医の先生が不在の保健室の中に入り、ベッドに腰掛ける。

ハァと心の中で深いため息をつく。

自己嫌悪が全身を襲う。

学校で言葉を発せられなくなってからは遠くへ行きたい、と思うことが増えた。

わたしのことを誰も知らない場所へ行きたい。

過去をすべて捨てて、新しいわたしを始めたい。

学校では誰とでも自由に言葉を交わせて、今とは真逆の自分になれたら。

友達をたくさんつくって休日は一緒に出掛けて、毎日が笑顔と希望で満ちあふれる毎日。

幸せな学校生活を夢見ていた。

そんな毎日を送りたかった。

送るはずだった。それなのに。

それなのにどうしてわたしはそれができないんだろう。

どうしてこうやってひとりで保健室に逃げ込んでいるんだろう。

逃げてばかりの自分がいやになる。

自分でもどうにもならない気持ちを持て余してしまう。

こうやって嫌なことがあると逃げ出す弱い自分がどんどん嫌いになっていく。

今にも泣きだしそうになり唇を痛いぐらいに噛みしめた時、保健室の扉が開いた。