わたしが言葉を失ったあの日。

モヤがかかったように目の前が白くなり、水の中に潜ったときのように言葉が不鮮明に聞こえてくる。

苦しい。

苦しくて仕方がない。

呼吸が浅くなり慌てて肩で息をする。

大丈夫。大丈夫。大丈夫。

必死に自分を励まし続ける。

「――奏多くんは小松さんだけじゃなくてみんなに優しいの。だから、変な勘違いしないほうがいいよ?」

突然、鮮明になったその声で頭の中がクリアになった。

「ちょっと、寄ってたかってなにしてんの?小松さん責めたってしょうがないじゃん。もうやめなよ、みっともない」

右隣の席の女の子の声。

「は?川ちゃんは関係なくない?黙っててよ」

「あまりにも目に余ることしてるからじゃん。誰かに嫉妬して攻撃するのってみっともないから」

「ハァ~!?」

わたしのせいで一触即発の事態になろうとしている。