私の世界を変えてくれた君へ。
第二章

暗い過去


4月も中盤に差し掛かった週明けの月曜日。

進級当初のざわめきが嘘のように落ち着きを取り戻した。

緑ヶ丘公園の桜はそろそろ見頃になっているはずだ。

今日の放課後は緑ヶ丘公園へ行ってみよう。

そう決めて気分よくバッグから取り出した教科書を机にしまっていく。

とそのとき、「奏多くーん、おはよ~!」クラスメイトの声が鼓膜を揺らし、思考が停止する。

正確には、『奏多くん』という名前に。

藤原くんが教室に入ってくると雰囲気が変わる気がする。

ぱあっと周りが明るくなるような、そんな感じ。

うまく言葉にはできないけど、彼の持つ華がみんなにも広がっていくみたい。

一番前の席の仲良しの友達と挨拶をして、廊下側の派手な女の子の集団とちょっぴりおしゃべりして左に曲がってわたしの前の席までやってくる。

そして、必ずわたしの席の前で立ち止まる。

あと少し。5歩、4歩、3歩、2歩。

彼が近付いてくる。

心の中がそわそわと落ち着かない。ああ、もう目の前にいる。

「結衣、おはよう」

頭上から降ってきた声に唇を固く結んで小さくうなづくのが精いっぱい。

あの日、緑ヶ丘公園で会ったのを最後にわたしの足はなんとなく公園から遠のいていた。

行けば藤原くんに会ってしまうような気がしたから。

いやだからじゃない、むしろその逆。会いたい、と思ってしまうから。

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