ふと今朝の川崎さんの言葉が頭に浮かんだ。

『弱い自分をさらけ出すのってすごい怖いよね。でも、そうすることで救われることもあるんだよ』

始めて伝えたいと思った。

この気持ちを。わたしの気持ちを伝えたいと。

救われるかどうかは分からない。

それでも、わたしは今、この気持ちを藤原くんに伝えたい。

【わたし こわいの 人にきらわれたり拒否されたり】

ペンを持つ手が震える。

【裏切られるのが】

藤原くんはわたしが書き終えるのを何も言わずに見つめていた。

中2の夏、友達だと思っていた2人から嫌われ、拒否され、裏切られたことをキッカケにわたしは教室で言葉を発することができなくなった。

そのトラウマは現在進行形でわたしを苦しめている。

それでも一生懸命努力したつもり。

言葉が出ないのは一時的なことかと思い、『風邪をひいて喉が痛くて声が出ない』という言い訳をして身振り手振りで周りの子とコミュニケーションを取ろうとした。

仲の良かった2人以外にもクラスにしゃべれる子はいた。

その子達のグループと行動をするようになり、わたしはしゃべれないなりに必死に笑顔を作った。

『結衣がしゃべらないのってわざと?』

ある日、放課後忘れ物を取りに行くと、教室の中から話し声が聞こえてきた。

とっさに身を隠し、耳を傾ける。