学校では体の周りに目には見えない強固なバリアを作り自分を守っている。

その狭いバリアの中にいれば、わたしの安全は保障される。

それは逆を返せばそのバリア内にいる間は何の刺激を得ることもできないということ。

見ることはできても、触れることはできない。

知る機会を失うことになる。

そもそも、今までずっとそのバリアの中に入ろうとする人はいなかった。

だから安心していた。

けれど、その均衡を破ろうする人が現れた。

藤原くんだ。

藤原くんはバリアを壊してまでわたしのテリトリーに足を踏み込もうとしてきた。

そして、安全な場所にいたわたしの手を掴み、外に連れ出そうとする。

わたしはそんな藤原くんが怖かった。

でも、その理由が今ようやくわかった気がした。

藤原くんの言う通りわたしは知らず知らずのうちに恐れていた。

嫌われることを。受け入れてもらえないことを。

自分でバリアをつくり、人を遠ざけていたくせに。

それなのに、自分のことは受け入れてもらいたいなんて都合がよすぎる。