近い。近すぎる。

体操座りする私の隣にあぐらをかいた藤原くん。

わたしと藤原くんの距離が近いことに今さらながら気づく。

ほんの少しでも動けば肩と肩が触れ合う距離感。

軽く触れ合うとその部分だけじんわりと熱を帯びる。

「今日一日で結衣のことがちょっと分かった」

藤原くんは得意げに鼻を鳴らす。

「肌の色が雪みたいに白いのと指が長い。まつげが長くて目の下に小さなほくろがある」

な、なに?急に!突然の言葉に慌てて頬を両手でおおう。

「繊細で人に気を遣いすぎる性格」

藤原くんは「当たった?」と首を傾げる。

図星だった。わたしは昔から人に気を遣いすぎるところがある。

こくりとうなづく。

「俺の兄貴も結衣と似てた。弟の俺に気ばっかり遣ってさ。兄弟だしケンカって絶対するじゃん?でも、うちはなかったんだよ。兄貴が怒らなかったから。俺が何をしても」

藤原くんはクスクスと思い出し笑いをしている。でも、笑っているはずの藤原くんが泣いている気がするのはなぜだろう。

「俺、正直兄貴に気を遣われると嫌だった」

【どうして?】

「だってそれって相手に対して嫌われたらどうしようとか、受け止めてもらえなかったらどうしようっていう不安の表れじゃん。相手に目には見えない線を引いてるんだよ。自分を自分でガードして守ってんの。俺は兄貴に気を遣われるたびにお前のことは信用していないって言われてるようでなんか嫌だった」

【そういう考え方もあるんだね】

「そうそう。俺は兄貴のことが好きだったから。嫌いになんてなるはずないのにな」

バカだな、ともう一度繰り返すと、藤原くんはフッと笑って空を見上げた。

藤原くんはやっぱり鋭い。

藤原くんのお兄さんがそうだったのかはわからないけど、目には見えない線をわたしは引いている。