「あっ、来たよ」

「いこ!」

わたしに気付くと二人は目配せし、席から立ち上がりわたしのすぐ横を通り過ぎていった。

呆然とその場に立ち尽くす。今の状況を脳が理解してくれない。

え?どうして?どこにいくの……?

今、わたしと目、あったよね?えっ。なんで。どうして。

出かかっていた言葉が喉の奥に沈んでいく。

持ち上げてしまった右手を下ろすタイミングが分からない。

頬がひきつり顔がカッと熱くなる。

笑顔を浮かべている自分の姿が急に滑稽に思えてきたと同時にすべてを悟った。

あぁ、そうか。そうだったんだ。

夏休み中も二人だけで遊んでいたのかもしれない。

きっと、花火大会も二人で行ったんだろう。

どうして気付かなかったんだろう。どうして。どうして。

二人を信じていた。だから、疑うことなんてなかった。

でも。

言葉より先に体が動いた。

わたしは弾かれたように回れ右して二人のことを追いかけていた。