「――ん?どうした?」

藤原くんはゆっくりと振り返り穏やかに瞳を細める。

「――っ……っ!!」

ありがとう、のたった五文字が出てこない。

大きく息を吸い込むと肩が上がる。このまま一気に吐き出すんだ。

流れは分かってる。

大丈夫、言える。

言わなくちゃ。

伝えたい。

この気持ちを。藤原くんに。

ひりつく喉の痛みに目頭が熱くなる。

口を開けて言葉を絞りだそうとしたせいで、両手に力がこもる。

顔中が真っ赤になり、目には涙が浮かぶ。

暑くもないのに額には大粒の汗。

苦しい。

息が苦しいんじゃない。

伝えられないこの気持ちがもどかしくてたまらない。

目の前の藤原くんが涙で滲む。