わたしたちの噂をしていた女子高生の前を通り過ぎる。

藤原くんの手にあるメモ帳に気付いて女子高生二人組は目を見合せ何かを囁いた。

それに気付いているはずなのに、藤原くんは何の反応も見せない。

ねぇ、藤原くん。きっと彼女たち勘違いしたよ?

わたしと同じように藤原くんがしゃべれないって思ったよ?

きっと気付いているよね。藤原くんは鈍感なようで意外と鋭い人なのかもしれない。

藤原くんに助けられたのはこれで二度目だね。

なんだか不思議。

言葉には出さなくても藤原くんの優しさが掴まれている手首を通して伝わってくるみたいな気がするの。

そのままレジの前まで来ると彼は何かを勢いよく掴んだ。

「ラスト一本、ゲット!」

大声でそう言うと、ペットボトルを手に勝ち誇ったように笑う藤原くん。

確かにラスト一本だったみたい。でもそれ藤原くん好きなの?

そんなに欲しかったの?

頭の中をグルグルと回る疑問。

でも、あまりの藤原くんの喜びっぷりにわたしまで嬉しくなる。なんだか子供みたい。藤原くんってやっぱり不思議な人。