「あの男の子かっこよくない?」

背も高く綺麗な顔立ちをしている藤原くんに熱い視線を送っていた女子高生たちはわたしの存在に気付いていぶかしげな視線を向けた。

「隣の女の子、耳聞こえないんじゃない?」

「でも補聴器つけてなくない~?」

「さっきからメモみたいなのに文字書いてそれで会話してるっぽいもん」

「筆談ってこと?じゃあ、あの男の子もしゃべれないの?でも二人だったら手話のはずじゃない?」

「ねっ。どうなんだろう」

思わず視線を足元に下げた。

ちくりと痛む胸。

ひとりでいるときなら平気な言葉なのにどうしようもなく心が乱される。

ごめんね、藤原くん。

藤原くんまでわたしのせいで悪く言われちゃってる。

【ごめんね】

急いでいたから汚い文字になってしまった。

藤原くんは文字を見るなり、わたしの持っていたペンを掴みサラサラとメモ帳に何かを書いた。

【ついてきて】

【どうして?】

【限定、あと1コ!】

藤原くんはそれだけ書くと、ペンとメモ帳を右手に掴み、左手でわたしの手首を掴んでズンズンと歩き出す。