「このメモ帳に結衣の気持ちを吐き出してよ。普段、言えないことあるだろ?」

わたしの気持ち。言えない言葉。

「一人で抱え込むのって辛いじゃん?だから、言ってよ。俺にだけは。俺はちゃんと結衣のこと受け止めるから。だから――」

藤原くんはその言葉の後、

「それに、図書館だよりつくる時にも俺だけの意見じゃなくて、結衣の意見も聞きたいし。二人で作るんだからさ」

と慌てたように付け加えた。

胸が温かくなる。

人とのかかわりを極力避けてきたのに。人からも極力避けられていたのに。

彼から差し出されたペンを恐る恐る掴むと藤原くんはうんうんっと優しくうなづく。

本当にこれでいいんだろうか

震える手でメモ帳の1枚目をめくる。

これに文字を書けばきっと彼との繋がりができる。

わたしの恐れていた世界に間違いなく足を踏み入れることになる。

正直、恐かった。誰かと親しくなるのは。関係を持つのは。

いつかは裏切られてしまうかもしれない。

また傷付くかもしれない。そうなってしまったらわたしは――。

「いいよ、無理しないで」

藤原くんの言葉が優しく心の中に染み込んでいく。