校門を抜けて大きく背伸びをする。
肺いっぱいに空気を吸い込むと、ほっとした。
ようやく、自分に戻れた気がする。
北側へと足を伸ばして緑ヶ丘公園へ向かう。
ほっかむりをして畑仕事をしていたあの老夫婦の姿はなかった。
おばあさんに会えたら『桜を見てきましたよ。でもまだ五分咲きでした』と教えてあげたかったのに。
ようやく公園が見えてきた。その途端、自然と足が早くなった。
気が急く。わたしの足はあの桜の木の下に向いていた。
「――ここにいたんだ?」
芝生の上に寝転んで桜を見上げていたとき、ふいに見覚えのある顔が視界の真ん前に現れた。
「――!!」
飛び跳ねるように体を起こす。驚きで心臓が飛び出してしまいそう。
「あっ、わりー。驚かせた?」
藤原くんはわたしの反応にクックと喉を鳴らして笑う。
「また桜見に来たの?」
自然とわたしの隣に腰を下ろした藤原くん。