「大丈夫だから気にしないで。あっ、そうそう。昨日話した図書館だよりの参考になるノートと過去の図書館だより持ってきたの。早めに渡しておいた方がいいかと思って。あとで藤原くんと一緒に目を通してね」

川崎さんがノートをこちらに差し出した瞬間、ノートに挟んであった図書だよりのプリントが数枚風に飛ばされた。

「あっ、ごめん!」

慌てて地面に散らばったプリントを拾い集めると、川崎さんが困ったように笑った。

「わたしって昔からいつもこうなんだよね。要領が悪くてミスばっかり。自分で自分が情けなくなっちゃう」

拾ったプリントの周りについた汚れをパンパンっと払っている川崎さんの表情にちくりと胸が痛む。

わたしも同じだ。自分自身が情けなくて仕方がない。

「昔はね、自分はどうしようもないダメな人間だってずーっと思い込んでたの。もちろん今も思うことはあるけど、そんな自分をさらけ出せるようになったの」

集めたプリントを川崎さんはそっと私に手渡した。

「弱い自分をさらけ出すのってすごい怖いよね。でも、そうすることで救われることもあるんだよ」

川崎さんはにこりと笑った。

「放課後に作業することになると思うから負担になっちゃうかもしれないけど、わたしもできることは手伝うからいつでも相談してね」

ありがとうございます。そんな思いを込めて小さくうなずくと、先輩は「じゃあね」と手を振って駆けていく。

その背中を目で追いながらわたしは先輩の言葉を思い出していた。

『弱い自分をさらけだすことで、救られることもある』

わたしは川崎さんのその言葉の意味をぼんやり考えながら歩いた。