「泥棒がいるのかもって、ホントびっくりしたんだから」

夕食時、ダイニングテーブルの向かい側に座った両親にそう切り出す。

「ごめんごめん。シソを取りに行ってたのよ。脅かそうとしたつもりはないの」

母は大人げなくぺろっと舌を出しておどける。

目の前のハンバーグの上には大根おろしとともに母が趣味で始めた小さな家庭菜園で取ったばかりのシソが添えられている。

それにしても。なんだか今日のお母さんは分かりやすく機嫌がいい。

それだけではなく、晩酌をする父のビールの進みも心なしかペースが速い。

首を傾げながらもこれ以上話を広げる気もないわたしはハンバーグを口に運んだ。

「ねぇ、結衣。今日家まで送ってくれた男の子は、誰なの?」

思わず固まった。

目を爛々と輝かせて興味津々といった様子の母と、もう母に何かを聞いたのかわたしがなんて答えるのか気になるらしくチラチラと視線を送ってくる父。

何ともいえないおかしな雰囲気が広がり、照れくささから逃れるように水でハンバーグを喉の奥に押し込みこう答えた。