「立候補してくれて、どうもありがとう。えっと、あなたは確か……」

そう言って手元も名簿に目を落とした後、川崎さんは「2年生の小松結衣さん、ね。それと同じクラスの藤原奏多くん」と微笑んだ。

目が合い遠慮がちに頭を下げる。

「藤原くんも一緒にやってもらえるんだよね?」

「はい」

川崎さんは藤原くんの答えにホッと胸を撫で下ろした。

「ふたりとも本当にありがとう。わたし、このまま決まらないんじゃないかって内心ひやひやしてて。心臓は今もバクバクしてるし。3年生にもなって後輩たちに好き勝手言われてビクビクしてるなんて本当情けない。みんなにも頼りない委員長って印象与えちゃったね」

苦笑いを浮かべる川崎さんに首を横に振ることしかできない。

そんなことないです。頼りない委員長なんかじゃないです。と、答えたかったけど言葉にすることは叶わない。

喉の奥に言いたい言葉が吸い込まれるように消えていく。

大勢の前で話すだけでもわたしにとってはすごいこと。

川崎さんはたった一人でこの場を仕切り、まとめようとしていた。

そんな川崎さんの姿を情けないなんて思わない。

そもそもスムーズに話がまとまらなかったのは川崎さんのせいじゃない。

「頼りない委員長なんかじゃないですよ。少なくとも俺達はそう思ってます」

藤原くんはわたしの言葉を代弁しているかのようにそう言った。

「そう言ってもらえると嬉しい。ありがとう。とりあえず、過去の図書館だよりと大まかな作り方やレイアウトの仕方がノートにまとめてあるからあとで持っていくね」

川崎さんはそう言うとにっこりと眩しいほどの笑顔を浮かべた。