まるでわたしの気持ちをすべて察してそれを後押ししてくれているみたいに。

手のひらにかいた汗が徐々に乾き始めた。目をつぶって大きく息を吸い込む。

そして、ゆっくりと息を吐きだすと意を決して右手をそっと持ち上げた。

自分では真っすぐ天高く一直線に持ち上げたと思っていた手の平はわたしの胸の上あたりで固まり不安げに震えている。

必死に伸ばそうと思っても肘が固まってしまったみたいに伸びてくれない。

これじゃ誰もわたしが手を挙げているなんて思わないだろう。

奈良の大仏のようなポーズを決めたまま微動だにしないおかしな奴と思われてしまうだろう。

全身が硬直したように動かなくなる中、図書室をぐるりと見渡していた川崎さんと目があった。

「あっ、もしかして立候補してくれるの?」

川崎さんはわたしに気付くとぱぁっと表情を明るくした。

その言葉に図書室内が一瞬だけシンっと静まり返る。

はい、という言葉の代わりに小さくうなづくと、周りの生徒たちが一斉に歓声をあげた。

「マジで!?」

「よかった~決まって~!」

「立候補してくれてよかったね!マジ、ありがたい!」

「じゃあ、今日の集まりはこれで解散します。皆さん、長い時間お疲れさまでした」

川崎さんの言葉に生徒たちが一斉に立ち上がり流れるように図書室から出て行った。

残されたわたしの前に川崎さんが歩み寄り声をかける。