「ちょっとでもやる気になったなら、手、挙げよう。俺と一緒にやろう」

藤原くんはふっと笑いながらそう告げると、椅子に座り直してまっすぐ前を向いた。

藤原くんの言うとおりだ。手を挙げればいい。さっき手を天井に向かって高く掲げたように。

さっきもできたように。藤原くんの後押しはあった。でも、自分で持ち上げられたあの時のように。

右手をスカートから離すと、手のひらに大量の汗をかいていた。

手を挙げて立候補するだけのことが今のわたしには途方もなく遠い目標に思える。

みんなが簡単にできることがわたしにとっては簡単ではない。

だけど。今の状況を変えたいとわたしは確かに願った。願っている。

だったら一歩踏み出せばいい。一歩だけ。ほんの一歩だけ。ただ、それだけ。

藤原くんにそっと視線を向ける。

彼はわたしの視線に気付くと、こちらに顔を向けた。

目が合うと彼は確信を持ったようにニッと笑って大きくうなづく。

『大丈夫』

藤原くんの目は確かにわたしにそう訴えかけてくる。