「もう部活行ってもいいっすか~?」
「ねぇ、トイレ行くふりして帰っちゃわない?あたし、絶対やりたくない」
「めんどくさいもんね」
図書室の中の空気は更に悪くなっている。それに伴って委員長である川崎さんの顔は困ったように歪む。
悠然とした態度に見えた川崎さんも心のどこかには不安があったのかもしれない。
責任感の強い彼女はそれを一生懸命押し隠して委員長という仕事を全うしようと必死になっている。そんな気がした。
「委員長がやるんじゃダメなんですか~?そうすれば全て解決じゃないですか」
「委員長と図書館だよりの発行は負担が大きいので兼任しないように先生から言われているんです。だから、誰か……誰かお願いできませんか?」
「えー、でもうちらもそんなに暇じゃないし。もう一度先生に兼任できるか聞いてみたら?」
どうして嫌なことは誰かに押しつけようとするんだろう。
こういうときだけ大きな声で自己主張を始めるんだろう。
嫌な役回りを全て川崎さんに押しつけようとする人たちに憤りが募る。
でも、ここで黙っているわたしも人のことは言えない。
黙っているということは同じ意見だということ。
困惑したような表情を浮かべる川崎さんを見つめる。
川崎さんは仕切ったり、人をまとめたりそういうことが自然とできる人と勝手に決めつけていたけれど、そうじゃないの?
彼女とわたしは違う。埋められない差があると思っていたけど、本当にそう?
分からない。今、どうしたらいいのか。この状況を変えたいと思っているのに。
それなのに、あと一歩のところで勇気がでない。