さっきまでスマホをいじったり居眠りをしていた人たちが自己主張を始めた途端、図書室内が嫌な空気で満たされていく。

真っ黒くてドロドロで今すぐ逃げ出したくなるような重たい空気。思わずスカートを握り締める。

人と人が揉めはじめようとするこの雰囲気がわたしは最も苦手だ。

「なぁ」

すると、隣に座ったままずっと黙っていた藤原くんがぽつりとこう切り出した。

「俺ら、やる?」

え?弾かれたように彼に視線を向ける。

「図書館だよりって、大体のレイアウトも決まってるしそんなに大変じゃないだろ。こういうイラストも俺、書けるから」

藤原くんが資料の中の前年度分の図書館だよりのイラストを指で叩く。

「俺、小中学生のとき周りの奴らに画伯って呼ばれてたし」

へぇ……。そうなんだ。全然知らなかった。藤原くんが画伯と呼ばれるぐらい絵が得意だったなんて。

「ずっと決まんないこの雰囲気嫌じゃね?まっ、結衣が良ければの話だけどさ」

藤原くんの言葉に一度うなづいてから辺りを見渡す。