ダメだ。いけないいけない!彼のペースにぐいぐい巻き込まれている。

わたしは藤原くんにこれでもかというぐらいの視線を投げかけながら首を横に振る。

でも、藤原くんはそれに気付かず、さっと前を向いてしまう。

えっ、なに、うそ。どうしよう。

ふ、藤原くん?お、お願い。

もう一度こっちを振り向いて。

約束してないよ?だって、わたし、手を挙げられない。

「はい、じゃあ、保健委員は決まりで!次、図書委員になりたい人~!挙手してください!」

いつの間にか保健委員は決まっていた。

背中と手のひらにじっとりとしたいやな汗をかく。

喉の奥が詰まり、心臓がありえないぐらい暴れている。

今にも椅子から落ちてしまいそうなぐらいの緊張が体中に押し寄せる。スカートを必死に両手で痛いぐらいに握り締める。

「俺、やる」

言葉通り藤原くんが真っすぐ手を挙げる。