振り返ると、母が気付いて小さく手を振った。

「心配性なんだから」

呟いてから苦笑する。

違う。母が心配性だからじゃない。わたしが心配をかけているんだった。

「いってきます!」

母に向かってブンブンと両腕を振りできる限りの笑顔を浮かべる。

大好きな母にこれ以上の心配をかけたくない。

母の姿が見えなくなると、わたしはハァと大きなため息をついた。

――また長い一日が始まった。