ねぇ、奏多。ようやくわかるようになった。

『同じもの見てんのに全然違く見えるって知ってた?』

奏多の言葉が蘇る。

本当だ。青い空を見上げるわたしの心の中に優しい風が吹いた。

思わずその場に立ち止まる。

「結衣?どうした?」

わたしの顔を覗き込む奏多。

わたしはにこりと笑った。

「ありがとう」

ありがとう、奏多。

「どういたしまして」

わたしに負けないぐらいの満面の笑みで答える奏多。

わたしの斜め45度の世界を変えてくれたのは、

キミのその笑顔だった。

生きて行こう。

これからも命尽きるまで必死に生きるんだ。

例え辛く悲しいことが起こったとしても、必ず乗り越える。

乗り越えて見せる。

「行こう」

奏多が歩き出そうとした時、再び風が吹いた。

温かく優しい風に包み込まれながら、今、目の前にある幸せを噛みしめながらわたしは新たな第一歩を踏み出した。

【END】