わたしは真っ直ぐ藤原くんの目を見つめ返して微笑んだ。

数か月前のわたしだったらこうやって藤原くんのことを見つめ返すこともできなかっただろう。

でも、今のわたしは違う。

ほんの些細なことをキッカケに心を傷付けられることもある。

その逆に誰かの心を傷付けてしまうこともある。

けれど、たった一人に、たった一言に心が救われることもある。

わたしが藤原くんに出会えたように。大切な人と出会えたように。

「わたしも……藤原くんが好き。ずっと前から好きでした」

「結衣……」

「よろしくお願いします」

ちょっと堅苦しい言い方になってしまった。

苦笑いを浮かべるわたしに藤原くんはまだ何か言いたそうにしている。

「藤原くん……?」

「あのさ、そろそろ藤原くん、っていうのやめない?」

「えっ……?」

「名前で呼んでほしい」

名前、で。藤原くんの……名前。