「暑くて溶けそう。まだ梅雨明け前だって言うのになぁ~」

藤原くんとわたしは放課後、揃って緑が丘公園へやってきた。

大きな桜の木の下の芝生の上に座りながらコンビニで買ってきたアイスクリームを食べ終えた藤原くんが大きく背伸びをする。

「明日から忙しくなるなー。今度のイラストは何がいいかな。やっぱ次は犬?」

わたしはにこりと笑って答えた。

「また猫でいいんじゃないかな?」

わたしはあの日以来、藤原くんとこうやって言葉を交わせるようになった。

でも、それは藤原くん限定。

しかも、一度教室内に入ってしまうと藤原くんとすら言葉を交わせなくなってしまう。

わたしの心の中のトラウマはまだ完璧には取り払われていない。

でも、わたしはしっかり前を向いている。

出来ないことを出来ないと嘆くのではなく、出来ることを出来ると認めてあげよう。

わたしはもう斜め45度に視線を落としたりしない。

「だなー。前の猫、メチャクチャ好評だったもんな~!」

得意げに鼻を鳴らす藤原くんがおかしくてくすりと笑う。

好評、とはまた違うかもしれないけど。口には出さずに心の中で呟く。

藤原くんとわたしは次号の図書館だより作りに立候補した。

明日から再び慌ただしい毎日が訪れるだろう。締め切りのことを考えるとちょっとだけ胃がキリキリしてくる。