反対に北は南側とは全く景色が異なる。

片側2車線の車の往来の激しい道路も、忙しそうに足早に通り過ぎていく人もいない。

だからわたしは、今日も北側に足を向ける。

しばらく歩くと周りは田畑だらけになった。

車同士のすれ違いも困難な一本道の農道に進むと、眼下に黄色い花が飛び込んできた。

道路と畑の境目に咲いたふくらはぎぐらいの高さの菜の花にはミツバチたちが集まっている。

昔から花は好きだ。見ているだけで心が洗われているような気がする、というところまでは到達できてはいないけれど、綺麗だなぁとは思う。

前から乗用車がきた。菜の花を踏まないように気を付けながら道路の端による。

そのとき、手ぬぐいを頭から頬にかけて包むようにかぶるほっかむりというスタイルで肩には鍬をたずさえたおじいさんがのろのろと道路を横断した。

おじいさんが渡り終えるまで待っていた乗用車のおじさんは困ったなぁと苦笑いを浮かべながら頭をかく。

道路を挟んだ反対側の畑では同じ格好をしたおばあさんが背中に大きな竹の籠を背負い手塩にかけて育てた野菜を収穫している。

ようやくおじいさんがおばあさんの元へたどり着いた。

乗用車はゆっくりとしたスピードで走り出す。