「ふ……藤原……くん」

藤原くんの黒目がわたしの声に反応して左右に動いた。

まるでその声の主を探しているみたいに。

「……藤原くん……」

もう一度名前を呼ぶと、わたしの目から大粒の涙が溢れた。

藤原くんは顔を動かさずに黒目だけを動かしてゆっくりとわたしを見た。

目が合った。

ゆっくりと数回瞬きをしたあと、藤原くんは再び目をつぶってしまった。

「藤原……くん?」

心配になって藤原くんの顔を覗き込んだ時、藤原くんの目尻から一筋の涙が流れた。

その途端、体の奥底から沸き上がってきたのは感謝の気持ちだった。

「藤原くん……生きていてくれて……ありがとう」

わたしの言葉に藤原くんが再び目を開けた。
そしてわたしの方に視線を向けると、藤原くんは優しく微笑んだ。

「よかった……。本当に……よかった……」

まだ意識が鮮明ではないのか再び目をつぶってしまった藤原くん。

わたしは慌てて藤原くんの頭のそばにあるナースコールを鳴らして叫んだ。

「意識が……意識が戻りました!!」