「今日ね、図書委員の集まりがあったの。次の号の図書館だよりを作ってくれる人がいないって川崎さんが悩んでたの。作るのは大変だったけど、やりがいはあったよね。藤原くんの絵も好評だったし。川ちゃんもまたあの猫の絵を見たいっていってたよ。……また一緒に作る?」

また、作れたらいいな。一緒に何かをできたら。

「藤原くん」

わたしはそっと藤原くんの手をさすった。

医師と看護師に刺激を与えてあげて欲しいと頼まれた。

それで藤原くんの目が覚めるなら、わたしはどんな努力だって惜しまない。

声をかけながら藤原くんの手を何度もさする。

「そろそろ目を開けようよ、藤原くん」

あぁ、ダメだ。また泣きそうになってしまった。

「また笑い合いたいの。藤原くんの笑顔が見たいよ」

藤原くんの病室では泣かない。

今度泣くときは藤原くんが目を開けた時、そう決めていたから。

グッと奥歯を噛みしめて、涙が零れないように顔を持ち上げる。

そのとき、ふわっと風が吹き、カーテンが揺れた。