そっと目を閉じて目の前の明るすぎる現実から逃げる。

けれど、耳を塞ぐことはできない。

例え塞いだとしてもどうせ嫌でも聞こえてくるだろう。

流れるように入り込んできたクラスメイトの楽しそうな声が鼓膜を震わせる。

「また同じクラスじゃん!!」「よろしくねー!!」「番号交換しようよ!」

あちこちで飛び交うそんな言葉を右の耳から脳を通さずに左の耳にすべて受け流すことができたらいいのに。

目を閉じたって何も変わらない。

分かっているのにわたしには目をつぶる術しか見つからない。

わたしの狭く息苦しい世界は中2のあの日からずっと続いている。

あの日からわたしの日常はほとんど何の変化もない。

変わったことといえば、教室が4階から3階になったこと。

クラスメイトの顔ぶれが少し変化したこと。

以前は他の子と比べて新しかった机が、今回は外れを引いてしまったのか年期が入っていること。しかも、最悪なことにガタガタと揺れる。

それに比べて変わらないことはたくさんある。

担任の先生、4月特有のどこかピリピリとした緊張感のある雰囲気の教室内、窓際の一番後ろの席、クラスメイトの笑い声、それを聞いて右手でスカートを握り締める私の手。

言葉にすることもできずに喉の奥深くに消えていくわたしの声。

透明人間みたいに誰の目にも映らないわたし。

いてもいなくてもいい。どうでもいい存在。