隣町の救急病院に搬送された藤原くんは緊急手術ののち意識が戻らないまま集中治療室(ICU)へ運び込まれた。
もう時計の針は23時を回っている。
両親には『藤原くんが事故にあったから病院にいる』と連絡をした。
『わかったわ。なにかあったらすぐに行くから連絡して』と母は心配そうにそう言った。
集中治療室へは自由に出入りすることは叶わない。
決まった時間だけ、数人の家族や親族のみがそこへ入ることを許されている。
その入室時間まで時間があるということで、藤原くんのおじいさんとおばあさんは入院の手続きなどをするために席を外した。
わたしはICUの近くの長椅子に座ったまま身動きが取れずにいた。
『危険な状態です。万が一の事態を想定しておいて下さい』
手術を担当した医師にそう言われたと、おばあさんは涙ながらにわたしに伝えた。
目をつぶると、藤原くんとの思い出が昨日のことのように思い出される。
始業式の日、藤原くんがわたしに声をかけてきたのは偶然なんかじゃない。
必然だったんだ。