お願い。伝えたいの。この気持ちを藤原くんに。

好き、そう言いたい。わたしはあなたが好きです。

す、き。

声は出せなかった。でも、わたしの唇はたしかにそう動いた。

藤原くんはわたしの目の下の涙をそっと指で拭った。

「うん。でも、俺の方がもっと好き」

鼻をすする。藤原くんの言葉が温かく心の中に広がっていく。

「初めて結衣に声をかけた時から、ずっと。大好きで大切な人」

藤原くんの瞳からすっと一筋の涙が零れる。

「ごめん。自分の気持ちだけ押しつけていなくなるとか最低だな」

苦しそうに笑った藤原くんは今にも壊れてしまいそうだった。

「結衣、ありがとう。それと……ごめん。本当にごめん」

その言葉にわたしは自分の方から藤原くんに抱きついていた。

言葉にできなくても。

声に出せなくても。

わたしの気持ちを藤原くんに伝える術はある。

藤原くん、泣いていいんだよ。声に出して。泣いていいの。

痛みも悲しみも苦しみもつらさも切なさも。

わたしが全部受け止めるから。