学校を出ると、わたしと藤原くんは緑が丘公園へ向かい、桜の木の下に揃って寝転んだ。

「気持ちいいな」

藤原くんはそっと目をつぶる。

藤原くんとこの場所で会ってからまだ一か月も経っていないのに、なんだかずいぶん色々なことがあったような気がする。

わたしを取り巻く状況は毎日めまぐるしく変化するし、同じ日は一日としてない。

クラス替えしたとき思ったのに。

わたしの日常はほとんどなんの変化もないと。

狭く息苦しい世界は中2のあの日からずっと続いていくと思っていたのに。

それなのに、今、わたしの隣には藤原くんがいる。

わたしに愛情を注いでくれる両親も、頼りになる川崎さんも、川ちゃんもいる。

ずっと孤独だった。ひとりぼっちだった。

でも、今はひとりじゃないと思える。

ずっと頑なにひとりだと思い込んでいただけ。

周りに目を向ければわたしを見ていてくれる人がいたのに。

それに気付こうともせず、自分の殻に閉じこもっていた。

苦しくなったり、辛くなったり、悲しくなったりすることだってたくさんある。

逃げだしたくなって全てを放り投げてしまいたい時だってある。

みんな一緒だ。わたしだけじゃない。

自分以外のみんなが幸せそうに見えた。

自分よりもずっと優れている気がして、劣等感にさいなまれたこともある。

でも、それはきっとその人にしかわからない。

色々な苦悩や葛藤の中、みんな生きてる。

それでも、生き続けている。